恐らく人類が幾度となく繰り返してき、戦争などに比べればとてつもなく小さなことなのかもしれないけど、それぞれに確実にある、混乱

今日は神戸で仕事を5時に切り上げ(さぼった、と言われればそうかもしれないけど、うちの会社はある程度時間は個人に任せられているところがある)、ある駅の近くにある回転焼き屋の前で、出来上がりを待ちながら、この余った時間をどうやって使おうか考えていた。そして、せっかくだから映画館で時間を過ごしてやろうか、という考えが湧いてきた。
映画館、神戸の下町的なエリアにあり、高校時代によく通っていたところだ。ゴダールの映画を初めて観たのもそこだった(初々しい体験談だ)。
その映画館の外側にあるウィンドウポスターを眺めながら、今上映している映画を確認して「まぁ観てみてもいいかな」と思いながら入口のほうに向かったのだが、入口から5メートルほど前のあたりで受付で立っている女性に気付き、0.3秒ほど彼女と目があったあと、「自分は映画館に入るつもりなんて全くありませんでしたっ、、、!」という振る舞いを意識して結果的に不自然になってしまった歩き方で入口とは違う方向へ進んだ。
あれは昔つきあっていた女性だったと思う。
入口に背を向け、3、4歩進んだ時に、その女性が別のお客さんへ発した「いらっしゃいませ」という言葉が背後に聞こえたが、それは一気に自分を過去へと連れ戻すには充分過ぎるぐらいの響きだった。
結局、映画を観るのもやめて、何をして良いのか分からなくなったので帰宅することにしたのだが、帰宅中の電車の中で流れる風景を眺めながら混乱する頭が鎮まるのを待った。


向こうは自分だと気付いただろうか。恐らく気付いただろう、向こうも少し息を飲むような仕草をしていた。彼女はあまり変わっていなかったが(正直に書くと、とても綺麗だった)、年を重ねた自分の姿を見て何と思っただろう。色んな過去のことが圧倒的なリアリティで僕の頭を支配して、時間軸が狂いそうになる。
もうあの映画館には二度と行けないかもしれない。あぁ地元の友人は、あの映画館の話をした時に、どうしてそういう情報をくれなかったのだろう。
こういうことは予想していたことなのだ。この町に帰ってくれば、ありうることだ、と。しかし今は、この町を歩く時は、ずっと下を向いていたい気がする。
この町に帰ってくるべきだったのだろうか。自分の過去に折り合いをつけられず下を向いているしかないのなら、次に移る場所のことを考えるべきなのかもしれない。でも急には無理だ。色んな事情がありすぎる。。。


最寄駅から自宅までの急な坂道。お土産の回転焼きが入ったビニール袋が僕の右足の太ももに不規則にあたる。今日は陽が明るいうちに帰宅してしまった。