2011年のフットボール

約1年ぶりに蓮實重彦氏が朝日新聞フットボール評論をされたようで。話題はもちろんなでしこです。
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/f30d23ed483d7570e80c099c0c3ec5c9
(勝手にリンクすみません)


基本的な論調としては、以前と同じく、サッカーこそが運動する知性を体現できるものだし、日本の選手の聡明さは評価するが、我々はそれ以上のものを見たいんだ、それは人間を超えた動物的存在の現出なんだ、というところかな、と思う。


そういう意味で蓮實氏は澤を「人間として最高レベルの選手」とまでしか評価しないし、動物めいたものを感じさせる選手として岩淵の名前をあげ、より期待を寄せている。


澤の決勝での2点目のゴールも、どさくさまぎれであり、二度と起きない奇跡である、とあまり評価してないようですが、僕はあれを見た時純粋に「すげーな」と思いましたし、忍者みたいだとも思ったし、失礼ながらちょっと化け物みたいだな、とまで思いました。もしあの瞬間を漫画化するならば漫画太郎先生以外に的確に描ける人はいないだろう。ゴール前の密集地帯で相手DFが全く反応できない、「人間を置いてきた」ような瞬間だった、あれは。「澤は人間以外の何かである」とあの瞬間に認識した人は多かったんじゃないだろうか(だからその後可愛らしくガッツポーズする澤を見て、逆にひきました。あ、人間に戻った、というか、人間というマスクを被ったな、と)。


確かに日本の選手は決定力に欠けるところがあり、動物的センスを感じさせる存在が必要なのは大いに納得するところなのですが、誰が動物か認識するのは人によるのかな〜。誰かは岩淵が動物だと言い、誰かは、いや、澤のほうが動物だ(いやそれ以外の存在だ…)と言う。アメリカのラピノー&モーガンの先制点もそれほど動物的で面白かっただろうか。入るべくして入ったという感じもするし。ひょっとして蓮實先生はロングボール主体のカウンター攻撃が好きなのかな?


恐らく宮間に関しても蓮實氏は「人間として最高レベルの選手」という認識なのだろうが、確かに宮間は知性派というか、野性的なプレイヤーというイメージはそれほどないかも。でも観る者がびっくりするようなプレースキックやクロス、長短のパスがありますからね〜(この間の大会で一番好きなプレーはスウェーデン戦での川澄へのクロスかな。あれだけ走りこんでダイレクトであげた精度の高いクロスは戦慄ものだと思います)。


まぁ、ただ、宮間に関して「この選手はただ者でない」、「敵味方を問わず彼女たちの動きの美しさを味わってほしい。勝利の瞬間に歓喜の輪に加わらず、米国選手たちと健闘をたたえあった宮間の謙虚さにふさわしく、スポーツを語らねばなりません。」と褒めて頂いているのはなんか嬉しい気分になりますけどね。


それから女子サッカーの魅力について、
「ボールを相手に与えず味方に預け続けることで、見る者を驚かす」というサッカーの理想型は、むしろ女子の方に残っているのではないでしょうか。
と語っておられますが、そういう意味では日本女子代表のスタイルってサッカーの正義みたいなものかもしれません。決勝でそれが貫けたかというと、決してそうとは言えないところがあるのですが。で、スタイルの話で言うとどっちかと言うとアメリカよりフランスのほうが理想的なのではないかと思います。だから日本vsフランスというのも観たかったな〜。